風の谷のナウシカ 3 (3)
“トルメキアの白い魔女”と第3軍 |
クシャナ殿下は、ナウシカに次ぐ第2の主人公といってもいいだろう。
実際、全7巻中、ナウシカ以外に表紙を飾った人物は、彼女ただ一人だ。
彼女の個性と存在感は、この巻においても際立っている。
劇場板の「風の谷のナウシカ」に比べると、こちらのコミックの方は、はるかに生々しく、残酷だ。
それは、作画についても言えるし、あらすじについても言える。
例えば、クシャナの次の言葉は印象的だ。
「わたしから第3軍を奪い、精兵を虚しく犬死させた者どもへの我が復讐をバルハラにて見守るがよい!!」
トルメキア王家の血で血を洗う争いの愚かさ。部下を置き去りにして、戦利品もろとも逃げ帰ろうとする将軍閣下の卑劣さ。
それとは対照的に、「殿下を守れ!!」「殿下万歳!!」と叫んで死んでゆくトルメキア兵たちの姿は、美しく、そして痛ましい。
クシャナがかっこいい! |
指揮官としてのクシャナが最も輝く巻。
ナウシカとともに、トルメキア軍が土鬼と闘う最前線サパタに着いたクシャナは、かつての部下を自分の指揮下に取り戻すが、そのシーンが感動的。ともすれば「殺人マシーン」となることが優秀な兵士の条件のように思われがちだが(どっかの国の軍隊が中東で行っていることを見るまでもない)、実は、義のため、愛のため身をささげる一面があるであろうことが伝わる。クシャナと再会したセネイの涙が美しい。そして、ナウシカの盾となって斃れた兵士たち、そしてナウシカを守るために犠牲となったトリウマのカイ。読むたびに涙が出る。
この巻のクライマックスは、クシャナの指揮のもとで、籠城戦から騎馬隊が土鬼軍を急襲するシーン。リアルな「戦い」が展開する。戦術、戦略の巧みさ以上にクシャナの人間としての魅力が光る。
と、いうようなことを書くとまるで戦争賛歌のような印象を持つかもしれないが、戦いの悲惨さ、空虚さがこれ以降の巻では、これでもか、これでもかと言わんばかりに説かれる。早計に判断しない方が良い。
この巻が1番好きです |
表紙、中身ともにこの巻が大好きです。風の谷のナウシカは、やはりナウシカが主人公のお話ですが、ナウシカの裏面とも言うべき、クシャナ抜きには話が始まりません。トルメキアvs土鬼との戦争の描写は、息をつかせぬ迫力と疾走感があり、大好きです。自然との調和をメインテーマとするナウシカの話の中では、やや異色なのかもしれませんが、漫画の魅力を強く感じます。
見せ場満載です |
ナウシカの全巻の中でも見せ場の多い巻です。特に最後の方の、サパタ城の騎兵戦の場面は最もダイナミックで劇的です。
ナウシカばかりでなく、脇役の魅力も見逃せません。父王への復讐を果たすべく戦場へ向かうクシャナ、本来の役目を捨てちゃっかり寝返るクロトワ、ナウシカの後を追って腐海を旅するユパの一行。それに後にナウシカと出会って生き方を変えてゆく土鬼の僧、生真面目なチャルカもこの巻から登場し、役者が揃ってきます。
読んでみるべし |
劇場版とは一味も二味も違う展開に、面食らうはず。
ナウシカだけではなく、脇役である人達にもきっと感情移入しちゃいます。
劇場版では敵役だったクシャナや、その部下のクロトワたちもタダの悪党ではありません。
むしろ愛すべき人物として描かれています。
クシャナは部下想いの指揮官ですし、喰えない男クロトワもなぜか憎めないキャラです。
トルメキア兵の中にはナウシカを慕い、その楯となり死んでゆく者さえいます。
そして背景には読み手側の想像を越える世界観。
生々しい描写の連続ですが、一読する価値は絶対にありますよ!