風の谷のナウシカ 1 (1)
叙事詩 |
同名映画の原作マンガですが、その世界観の深さは段違いです(一種の存在論にまで深化されています)。宗教、戦争、そして「腐海」と蟲たちといった事物が混沌と入り混じる、先行きが全く見通せない世界を舞台に、本当に取るべき最善の道を模索していくナウシカの姿が胸を打ちます。残酷で、不気味で、そして優しさも見せる豊かな作品世界は本当に魅力的です。何かの映画番組で「もののけ姫」を「一大叙事詩」と表現していましたが、僕としてはこのマンガ版「ナウシカ」の方が「叙事詩」という表現にぴったりではないか、と思います(「もののけ姫」も素晴らしい作品だと思いますが)。
すごく楽しめました! |
原作がこういう作品だったとは全く予想外でした。映画もなかなか良かったですが、いくつかの点で物足りない感じがありました。こちらでは完全燃焼できます。映画を楽しめた人、さらなる深みに興味がある人、であれば必読だと思います。
映画も原作もおすすめ! |
映画「風の谷のナウシカ」の原作ですが、
映画とは少し、お話の内容や構成が違っています。
なので、映画と原作漫画、お互いに密接に関わりあった別の作品
として楽しむことができるのではないでしょうか。
映画は、原作の1〜2巻に相当します。
原作では7巻で完結するまで、さらにお話が展開していきます。
原作のほうでは映画にはない物語の背景や世界観が
中世画のような、緻密な(まるで絵コンテのような)漫画を
通じて表現されています。
各キャラクターの個性もより細かく描写されています。
生死に関わる描写もより現実的にかかれていますが、
それもこのお話にとって大切なテーマとなっています。
一方映画では、鮮やかな色彩と動きによって
雄大な自然や個々の感情にいたるまで、
漫画では表現できないところまで、表情豊かに記されています。
どちらも感動しましたので、おすすめです..
もののけ姫だけじゃなくって |
アニメ映画「風の谷のナウシカ」の原作マンガです。 映画とは少々舞台設定が異なります。ストーリー的にもかなり違います。
というか、映画が公開された後にもずっと雑誌「アニメ−ジュ」への連載が続いていたので、王蟲の暴走以降もお話が続いているのです。王蟲の暴走(ダイカイショウ)は映画ではクライマックスシーンでしたが、原作ではむしろ、ここからが物語の幕開けです。
他の映画(ラピュタ、トトロ・・・)製作時の連載休止を幾度かはさみ、何年もの(十年以上か?)長きに渡って雑誌「アニメ−ジュ」に連載された、宮崎駿のライフワーク的作品。
映画とは違った複雑で深い「ナウシカ」の世界への入り口がこの1巻目です。個人的には「もののけ姫」より「深くて感動的」だと思っています。テーマはほぼ同じだと思いますが(生きろ! ということ、世界の美しさと残酷さ、喜びと痛み、悲しみ)。
1巻目は可愛くて活発でしっかり者の(でも時として不安定な)ナウシカちゃん及び腐海という神秘的な世界が魅力的。巻を重ねるにつれ徐々にテーマは重くなっていきますが、重いだけではない痛快活劇・冒険物語でもあります。引き込まれること請け合いだから、とりあえず読んでみてね。
壮大な物語の序章 |
実に壮大な物語、風の谷のナウシカの導入部分に当たる本で、映画版との共通点が一番多い巻となっています。大多数が滅亡した人類の1000年後の世界が、古代〜中世ヨーロッパ+中央アジアのレトロな雰囲気で描かれています。天空の城ラピュタにも見られますが、宮崎駿さんの描く世界はどう見ても別の文明社会で、今の歴史上に照らしてもいつの時代を描いたものなのか判然としません。一種のパラレルワールドであろうと思われます。いずれにしても日本人には異文化、私などはこの「宮崎駿さんの世界」に何となくあこがれみたいなものを感じてしまいます。この第1巻には珍しくも宮崎さん自身の虫めずる姫君とギリシャ神話に出てくるナウシカの解説が付属しています。
宮崎さん自身が述べているようにマンガ家には向いていないという点ですが、これはある程度理解できます。「シュナの旅」などもそうですが、宮崎さん直筆の漫画は、娯楽作品として読めるようなものではありません。主人公の全身から発せられる悲しみ、憎しみ、怒り、慈しみなどの感情に読み手が同化没入していくことが必要だからです。ナウシカの世界に入り込むにはある程度「俗世界の憂鬱」から離れて、この物語にのめり込むことが必要と思われます。
さて、この壮大な物語に没入するには、この第1巻をクリアすることが必要です。7巻まで全部を読んだとき、やはり難解なこの話は一度読んだだけでは理解しきれないと感じるかも知れません。その時には何度も繰り返し読みたいのですが、気力、体力、集中力が充実しているときに限ります。また頭を完全に切り換えて「世俗の憂さ」をはなれた環境というのも必要でしょう。とは言っても、この物語が警鐘を鳴らしている「あるべき自然の姿」は意外に身近な問題かも知れません。うかうかしていると地球環境の破壊は目の前に迫ってきていて漫画の世界だとは言っていられなくなるのでしょうね。