フン!
出版社もこのニヒルな主人公の売れ行きは予想外 |
朝日新聞朝刊の4コマ漫画「ののちゃん」から誕生したコミックです。「ののちゃん」の登場人物で一番アイソのないポチを主人公にした本書は、どのページを開いても眉間にシワを寄せた不機嫌そうなポチが登場します。こんなにヒネたペットが主人公なのに、なぜかホンワカして、電車の中でもクスクス笑ってしまいました。いやぁ、いしいひさいちはエライ!
本書の真中には、「日々のポチ」というエッセイが載ってます。「春」「夏」「秋」「冬」の4編には、ポチと家族の不思議な距離感のある生活がポワ〜ンとした文章で描かれており、マンガの間の“箸休め”になっています。
のの子のおばあちゃん「しげ」は、朝日新聞の朝刊でも偏屈ぶりを遺憾なく発揮しています。その偏屈な「しげ」が偏屈なポチを連れて歩く場面は秀逸です。「こうした散歩を通じてポチは人間と人間の世界に慣れた」と書いたあと、「そしておそらくしげも人なつっこい人間ではないが、こうやって長く人間と出会っていくうちに人間に慣れていったのだろう」と続けています。
おいおい、ポチも「しげ」も同じようなもんかい。と突っ込みを入れるまでもなく、山田一家は偏屈なポチ以上に変わりモノぞろいなのです。
ラ・ロシュフコーだのソポクレスだの、文末に古典の箴言を引用しているのも、もっともらしくて笑っちゃいました。
朝日新聞で紹介したら一時期在庫切れになってしまったそうですが、出版社もこのニヒルな主人公の売れ行きは予想外だったのでしょう。図書館派の私も11月10日の第3刷を買いました。
自分を犬と思っていない犬の物語 |
多分ポチは自分を犬と思っていない。というより人間より偉いと思っていると
言ったほうが正しいか。
それをおまえは犬なんだという前提で彼を押さえつけようとする山田家
(特に親父)との壮絶バトル物語。
どうも人間様の方が分が悪いことが多いが。
しかし、ここまでかわいげの無い犬も珍しく、だからこそ主人公で漫画も描けるというものだろう。
あなたの家の犬もあなたのことをこういう風に見てるかもしれません。
だから、なんだというのだ? |
「鳥頭な先生の絵よりはマシ(*1)」というような絵と字、やる気の無い主人公、かみ合わない登場人物、「だから、なんだというのだ?」と言いたくなるタイトル...。こんなにマイナス要因がそろっているのに、ついつい、読んでしまう。あ〜、なぜだぁ...。
主人公ポチのマイペースもさることながら、山田家の主人である山田たかし氏(*2)が良い味出してます。全編通して「笑い」がテーマですが、『ボチの消えた日』のように、和み気分になる作品もあって、心の中から嫌な気分が消えない時の「心の清涼剤」にも使えます。
(*1)S原せんせい、ごめんなさい。愛読してます。尊敬してます。でも....。
(*2)山田家の中では、もっとも影が薄い人物です。
新聞で紹介されたので。 |
A新聞で大きく取り上げられてから在庫切れになってしまいました。早く増刷して欲しいです。
いしいひさいち氏の漫画はその枠にとどまらずミステリーや文芸書評や政治評論を楽しく読ませてくれるので大好きです。
山田家のポチは常に冷静に家族を観察し、そのくせニヒルに振る舞う犬という立場でいながら、不思議に自然に家族の一員として存在しているフシギなヤツです。
そのポチの視点から見た家族がおかしくもかなりシビアに迫ってくる本です。みなさんぜひ読んでください。
ふんだ! |
ポチのことが良く分かります。
皆さん是非読んでみてください。