宮崎駿の雑想ノート1 「知られざる巨人の末弟」
佐野史郎の静かな熱演と人間を描いた脚本・演出が印象的な秀作ラジオドラマ |
宮崎駿の連作短編集「宮崎駿の雑想ノート」から材をとった約60分のラジオドラマを収録。
1920年代、バルカン半島の架空の小国ボストニア王国が舞台。巨大爆撃機による空中艦隊を夢想した若い国王と彼が購入した巨人機が迎えた悲劇を描く。ラジオドラマ化にあたっては、原作のボストニア王国のストーリーに、現代日本から現代のバルカン半島の紛争地帯へのツアーに参加した日本人青年のストーリーをかぶせ、重層的なストーリー構成をとった。国王と日本人青年の二役を佐野史郎が演じる。
ラジオドラマということで、当然のことながら音声だけでストーリーは進むが、演出・脚本ともすばらしいものになっている。佐野史郎は声だけで二役を演じわけ見事。作品ごとに異なる俳優が出演しているこのシリーズの中でも、屈指の出来。
原本となった宮崎駿作品は兵器に焦点をあてた内容になっているが、ドラマ化にあたっては列強のパワーゲームの狭間で翻弄される小国のナイーブな若い国王と現代日本の平和に慣れた青年とを対比的に描く、人に注目したものになっている。それだけにこの若い国王が迎えた悲劇が印象的になった。