もののけ姫はこうして生まれた。
宮崎駿監督が渾身の力をこめて制作し、公開されるや大ヒットとなった1997年のアニメ作品『もののけ姫』。本作はそのアニメーション制作現場から、宣伝戦略、アテレコにおける声優と宮崎監督のやりとり、さらに公開後の大ヒットの様子までを約2年にわたり克明に記録したドキュメント映像である。さらには、北米公開時に宮崎監督がトロント、ロスアンゼルス、ニューヨークの3都市をキャンペーンで回った際の映像も特典として収録している。 最初はただ1人の頭の中にだけ存在していたキャラクターやストーリーが、多くの人の「化学変化」を経て具現化し、さまざまな魅力を内包した1本の作品として完成した後、やがて多くの人々の心を国境すら越えてとらえてしまう。その過程が、ここまで詳細なドキュメンタリーとして見られるということ自体ひじょうに画期的なことだといえる。『もののけ姫』や宮崎駿作品のファンはもちろんだが、クリエイティブな業界を志す人、あるいはすでにそういった業界のただ中に居る人たちも見て損はないはずだ。(安川正吾)
本質に迫る過程 |
このDVD/Videoにはいくつかの奥深い意義がある。
最も直接的には、広い意味での「創造」がいかなる過程で行われていくかということを、偉大なクリエーターに間近に寄り添って追体験できるということである。それを追体験することで「創造」の本質が「模倣」と「総合化」であることが見えてくるはずだ。宮崎駿の世界は、まず、その断片断片が彼の興味と学習によって得られたものに過ぎないことが彼の正直な告白によって把握される。その出発点は「模倣」なのである。そして、その断片を一定の哲学と熱い思いによって首尾一貫させていくことで新しい世界が作り上げられていく。つまり「総合化」である。その壮絶な試行錯誤が「創造」なのである。それを身震いする感覚で追体験できる、というのがこの作品の第!!!の意義であろう。
また、アニメーションの製作は極めて分業的な世界である。そのため、その過程に携わる人々をいかに一つの方向に向かわせるかが重要な課題となる。本作品では、そのためにコミュニケーションツールとしての言葉がいかに重要かが強調されている。プロデューサーである鈴木氏も作家である宮崎氏も、自分の考えを言葉に変換するのが非常にうまい。そしてそれが組織成員を支配することを十分に意識している。「組織の運営」という観点からも本作品は濃厚な示唆を与えてくれる。
その他ににも考えさせられることは多い。物事の本質に迫るための様々な題材を与えてくれる、そんなドキュメンタリーである。
宮崎監督の凶暴な熱意 |
宮崎監督が「もののけ姫」に如何に熱意を懸けたのかが分かるドキュメンタリー。今まで断片的にしか見る事の出来なかったジブリのアニメ作りも見届ける事が出来、その現場の凄さにも圧倒。360分は長いが、それだけの価値があるドキュメンタリーだと思う。これは、宮崎監督の壮絶で凶暴な闘いの記録なのだ。